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環境指標による地球環境レポート


EARTH REPORT STATE OF THE PLANET
NATIONAL GEOGRAPHIC
ナショナル・ジオグラフィック



プロローグ


大気中に排出された80億トンの二酸化炭素。 世界の海で漁獲された9千万トンの魚。 切り倒された11億本の樹木。 これらは一年間の数字です。

地球の環境問題は、どの国にとっても深刻な問題です。 しかし、環境改善に成果を上げている国もあれば、 環境を悪化させている国もあります。

2007年の環境指標を元にして、現在の地球の状態を診断します。

現在は世界中の国々が環境問題に積極的に取り組んでいます。 ニューヨークのタクシーはハイブリッドカーに変更。 オーストラリアは蛍光灯の使用を推進。 バチカン市国はカーボンニュートラル化を進めています。

世界の国々が真剣に環境対策に乗り出したのは、地球の自然が変化しつつあるということが、明らかな事実として認められたからです。 その原因は66億の人間にあります。 空、陸、海。そして、そこに生きる様々な生き物たち。 去年(2007年)一年間で地球に何が起きたかを検証し、現在の地球がどんな状態にあるか見てみましょう。

イエール大学とコロンビア大学の共同プロジェクトチームは、 一年に一度、環境指標を発表しています。 私たちは、この環境指標を元に、世界141カ国をランク付けして、地球の環境改善に貢献している国とそうでない国を明らかにします。 ダニエル・エスティ ( DANIEL ESTY Co-Directoe EPI Yale University、以下DE )は環境指標の責任者です。


DE 「 私たちの環境指標は、データを元にして、空気汚染、水質汚染、温室ガス排出量などの項目ごとに、各国の数値を示したものです。そして、全体的な指標を作成しています。 」


2006年の環境指標によれば、地球の環境に最も優しい国はニュージランド。 それに続くのはスウェーデン、フィンランド、チェコ、イギリスです。 その反対にリストの下位にランクされてしまった国々にとっては、あまりありがたくない指標だといえます。


DE 「 私たちはそのような国と一緒に、地球のために何ができるかを考えたいのです。 実際にUAEやメキシコや韓国などは、この環境指標を参考にしたいと言ってくれています。 これは大変嬉しいことです。 」


地球の健康状態を簡単に測ることはできません。 更に、地域ごとの気候や人口や経済状況など、環境に影響する問題は単純に国境によって分けられるものでもありません。 しかし、環境指数の作成チームは国連やネイチャー・コンサーバンシーや様々な世界的研究機関から確かなデータを集めて分析することで、 信頼できるベースラインを作り上げることが出来たと自負しています。


DE 「 人間は複雑な生き物で地球に与える影響も様々です。 しかし、私たちの環境指数を見れば現在の地球がどのような状態にあるかはっきりと認識できます。 」




温室効果ガスの排出量


地球の表面から上空560kmまでは、窒素や酸素など様々な種類のガスによって構成されている大気で覆われています。 宇宙から見た地球が青く見えるものこの大気があるからです。 しかし、大気中に含まれる二酸化炭素やメタンガスなどの温室効果ガスは、この250年間で急速に増え、過去65万年の中で最も多くなっています。

マイケル・フェイ ( MIKE FAY Explorer in Residence National Geographic Society、以下MF )は、アメリカ地理学協会の調査員で保護活動家です。


MF 「 炭素は200万年をゆうに越える太古の時代から現在も変わらずに地球上に蓄積されています。 しかし、私たち人類は、この60年間か80年間でおそらくは過去の1億年分に相当する程の大量の二酸化炭素を排出してきたのです。 」


科学者や政治家は、年十年も前から大気中の二酸化炭素が増えた原因を議論してきましたが、2007年2月2日、この議論に終止符が打たれます。 アメリカを含む100カ国以上から集まった気象研究家チームは、6年にわたって様々なデータを分析し、気候変動に関する政府間パネルを通して、レポートを発表しました。 そのレポートは、地球の気温と海水温は上昇し続けており、人間による化石燃料の燃焼や森林伐採などが気候変動の原因だと結論づけています。


MF 「 各国の研究者が地球の環境が変化している原因は、人間にあると認めたのは非常に画期的なことでした。 そして現在は人類が実際に行動を起こすことが求められているのです。 」


大気中の二酸化炭素や他の温室効果ガスは、地表に太陽の熱を保ち地球を生物に適した環境にしています。 しかし、大気中の温室効果ガスが増えると太陽の熱で地球の気温は上昇します。 既に地球の平均気温は1.4℃上昇しているのです。 人類が今のペースで二酸化炭素を排出し続けると22世紀が始まることには地球の気温が4℃から7℃上昇する可能性もあります。 インドや中国のように急速に発展しつつある国では、二酸化炭素の排出量も急激に増え続けています。

アメリカ人一人当たりの二酸化炭素排出量は中国人の5倍です。 しかし去年(2007年)は、中国全体の二酸化炭素排出量が初めてアメリカの排出量を上回りました。

人口13億人の中国は、外国企業の工場の進出で急速な経済成長を遂げています。 それは、中国が先進国の二酸化炭素排出量の多くを肩代わりしているということです。 安い中国製品の需要が高まればその分だけエネルギーが必要です。 その結果、中国では一週間に一つのペースで新たな火力発電所が作られています。 一つの発電所が年間に排出する温室効果ガスは車200万台分です。 更に、今後10年間で4億人が農村部から都市部へ移り住み、その多くは豊かになって車を持つようになると予測されています。 中国の二酸化炭素排出量は増える一方です。

環境指標で温室効果ガス排出量の項目を見ると、二酸化炭素排出量の多い中国は下位にランクされます。 しかし、国民一人当たりの排出量で比較した場合結果は違ってきます。

国民一人当たりの二酸化炭素排出量の多い国に挙げられのは、ロシア、サウジアラビア、カナダ、アメリカなどです。 そして、クウェート、オーストラリア、UAEはワースト5に入ります。 その反対に二酸化炭素排出量が少ない国としては、アイスランド、コスタリカ、スウェーデン、スイスがランクの上位を占めます。 ナンバーワンにランクされるのは香港です。

去年(2007年)一年間で人類が排出した二酸化炭素はおよそ80億トンにも及びます。 その結果、大気中に占める二酸化炭素の割合は、産業革命以前に比較して、37パーセントも増えてしまいました。 既に研究者の多くは、世界中で異常気象が増えているのは二酸化炭素排出量の増加が原因だと認めています。

温かい空気はより多くの水分を溜め込みます。 そのため、水の多い地域では雨が増え、水の少ない地域は乾燥します。

オーストラリア南部のマレー・ダーリング盆地では、2001年から干ばつが続いています。 フランスとスペインを足した広さの盆地には、かつてはオーストラリアの灌漑用水が大量に引かれていました。 しかし去年(2007年)、水が危機的なレベルまで減ってしまいました。 農作物に被害が出てオーストラリアが食糧不足になるのは時間の問題です。 去年(2007年)は、南極大陸を除く全ての大陸が深刻な干ばつにみまわれ、その結果、自然火災も発生しました。


マーク・ライナス ( MARK LYNAS Emaerging Explorer National Geographic Society、以下ML )  「 大規模な自然火災が起きる条件は、気温が高いことと風が強いこと。 そして、非常に乾燥していることです。現在の地球はそうした条件に合うことが数多くなっています。 」


ギリシアでは、高い気温と雨が減ったことで自然火災が増えました。 火災によって国土のおよそ5パーセントが焼かれ多くの犠牲者が出ています。 その炎は宇宙からも見えます。最初のオリンピックの競技場も火に焼かれ、ギリシア全土で莫大な被害が出ています。

アメリカでは、大規模な山火事によって南カリフォルニアの20万ヘクタール以上が焼けました。 家から非難した人は50万人以上にのぼります。

パラグアイでは、40万ヘクタール以上を焼く史上最大の自然火災が発生、その様子は衛星画像でも確認できます。

湿度の高い気象の地域に目を向けると、そこでも去年は気温上昇の深刻な影響が見られました。

イギリスでは、大雨でツェベリン川が氾濫し数万人市民が何日間も電気を水道を使えない生活を余儀なくされました。

地球の反対側のバングラデシュでは、8月と9月の集中豪雨によって国土のおよそ40パーセントが洪水にみまわれました。 非難を余儀なくされた人は900万人以上にのぼり、およそ200人が亡くなっています。

こうした異常気象と温暖化の因果関係はまだ判っていませんが、気温の上昇が続けば干ばつや洪水は更に増えると予測されています。




海水温の上昇


人間が化石燃料を燃やして排出する二酸化炭素は、全てが大気中に上昇するわけではなく、およそ半分は海に吸収されています。 しかし、海水の温度が上がると海が吸収する二酸化炭素の量は減ってしまいます。 つまり地球温暖化が続けば大気中に溜まる二酸化炭素の量が増え、それがまた気温と海水温の上昇を加速させてしまうのです。

アメリカ地理学協会の調査員のシルビア・アール ( SYLVIA EARLE Explorer in Residence National Geographic Society、以下SE ) は50年前から海の調査を続けてきました。


SE 「 地球の気象をコントロールしているのは海です。 大量の二酸化炭素を吸収する海が存在しなければこの地球のシステムはまったく機能しなくなります 」


海水温が上昇すると魚の大量死やハリケーンの強大化など様々な問題が起きます。 しかし去年(2007年)は別の問題が注目されました。 それは海水の温暖化による海水面の上昇です。 気候変動に関する政府間パネルによれば、地球の海水面は一年に平均3.1ミリメートル上昇しています。 現在のペースで海水温の上昇が続けばモルジブやバヌアツなどは今世紀中にも世界地図から消えてしまうかもしれません。

地球の温暖化は北極の氷も解かします。 衛星画像を見れば、北極の気温はどこよりも速く上昇していることがわかります。 2007年の夏には、北極の氷は予想された最悪のシナリオよりも速いペースで消失しました。9月16日の時点で残ったのは410万平方キロメートルだけです。


ML 「 研究者たちは、北極の氷が解けたことではなく、 あまりにも速いペースで氷が消えているという事実に大きなショックをうけました。 」


北極海を通って大西洋と太平洋を結ぶ北西航路は、何世紀もの間氷に閉ざされていましたが、8月21日のNASAの衛星画像を見ると氷が消えていることがわかります。

このニュースを受けて、かつての大航海時代のように、数カ国が北極の所有権を主張し始めます。 ロシアの潜水艦は北極海の海底に国旗を建て、デンマークは北極がデンマーク領のグリーンランドに属することを証明するために調査隊を派遣、 カナダは航路を管理して北極に軍の基地を新設することを宣言しました。 海運会社はアジア・ヨーロッパ間の輸送時間を従来の三分の一にできる北西航路の出現を歓迎し、石油会社は北極に眠る原油を探し始めています。


MF 「 北極の氷が急速に解けて北西航路が開けたという事実は、本来は悪いニュースであるはずなのに人間というのは愚かなものです。 目先の損得になることに対してはすぐに反応して行動を起こすのに、長い目で見れば大切なことにはあまり関心を持とうとはしません。 」




魚の乱獲


地球の様々なシステムは、複雑に結びついており人間の活動にも影響を受けるので、私たちは今まで以上に地球のシステムを理解していかなければなりません。 特に、二酸化炭素排出量を抑えることは、私たち人類だけではなく地球上の全ての生き物たちのためになるのです。


SE 「 大気中に排出された二酸化炭素の多くは海が吸収してくれます。 海の生き物や植物は二酸化炭素を取り込んで酸素を作り出し人間の食料を提供してくれるのです。 」


しかし、海が吸収する二酸化炭素が増え過ぎてしまうと海水の酸性度が強くなり、 プランクトンやサンゴが骨格を形成することが難しくなって生きていけなくなるのです。

現在のペースで二酸化炭素排出量が増え続ければ、200~300年後の海は過去3億年で最も酸性度の強い海になると予測されています。 海は人間がとるたんぱく質の最大の供給源であり、世界中で35億人が海の食料に頼って暮らしています。 しかし、魚の数は何十年も前から減り続けています。 長さ100キロメートルにも及ぶ巨大な網を使った漁も、錘をつけた網で海の底を引くトロール漁も、それが環境に大きなダメージを与えていることは間違いありません。 去年一年間に世界各地の海で網にかかって死んだクジラとイルカは、およそ30万トンにものぼりますが、トロール漁の場合、被害は更に深刻です。

人類は年間におよそ9000万トンの魚を海からとっています。 国連は、私たちが現在のペースで魚をとり続け魚の数を元に戻す努力をしなければ、2030年までにおよそ4000万トンの魚が不足すると予測しています。

海の魚を減らさない取り組みで環境に貢献している国もあります。 去年の環境指数のランキングを見てみましょう。

ランク上位のフィンランド南アフリカスウェーデンは、 自国の海での漁獲量に一定の制限を設けて成果を上げています。 オーストラリアも同様です。
これらの国とは対照的に、漁獲量に制限を設けていないシンガポール、ベルギー、ドイツは、環境指標のリストの下位にランクされています。最下位はオランダです。

海の生態系は既に危機的な状況にあります。 しかし、研究者にとって人々の目に見えない海の中の危機を知らせるのは簡単なことではありません。 温暖化の影響で危機的な状況にあるのは海の中だけではありません。




森林伐採


地球の陸地、1億9400万平方キロメートルの中で、保護されているのは7パーセント以下です。 その多くは人間がいない土地ですが、それでも生き物たちは温暖化の影響を受けています。

アメリカ杉は地球上に最も古くから存在する生き物のひとつであり、中には樹齢が2000年を超えるものもあります。 時には100メートル以上の高さに成長する地球で最も高い木ですが、その数は急激に減っています。


MF 「 何年も成長したアメリカ杉は現在はおよそ3パーセント しか残っていません。地球の全ての森でこれと同じことが起きているのです。 」


それぞれの土地によって事情は異なりますが、森林伐採は去年も引き続き世界各地で大きな問題になりました。 ボルネオでは、およそ2万6000平方キロメートルの熱帯雨林が伐採され、 代わりにバイオディーゼル燃料の原料になるアブラヤシの木が植えられました。 ブラジルでは、一年間で平均で2万平方キロメートルの熱帯雨林が大豆畑や牧草地に姿を変えています。 更にコンゴでは、貧しい農民たちが家での料理や暖房に使う炭を手に入れるために、 一年間で9000平方キロメートルの森を燃やしています。

既に世界の森は、50パーセント近くも失われ過去5年間のNASAの衛星画像を見ても、 森が消失するペースが遅くなっている兆候はみうけられません。 現在は、一秒間にサッカー場と同じ広さの森が失われています。


MF 「 森が失われるとその土地の地盤が弱くなり、更に地球の 水の循環システムにも悪い影響が出るのです。森林伐採は、先進国にも 途上国にも非常に深刻な問題です。 」


世界各地で森林が伐採され燃やされることで、一年間で大気中に排出される二酸化炭素の量は、 全世界の二酸化炭素排出量の25パーセントにものぼっています。 樹木は大気中の二酸化炭素を吸収するので、森が消えれば必然的に二酸化炭素が増えます。


DE 「 世界には急速に森が消えている地域もあります。 ですから、森林伐採の問題は、その国が地球の環境を守るためにどれくらい貢献しているの一つの重要な目安になるのです。 」


このような観点から環境指標では国ごとに森林伐採の多さを数値化しています。 ウガンダ、パキスタン、ナイジェリア、インドネシアは、下位にランクされています。 その一方で、ドイツ、キューバ、ウクライナ、スペイン、イタリアなどは、森林の保護と育成に積極的に取り組んでいます。 ブラジルでは、一年間に伐採された森林が以前より30パーセントほど減り、過去最小を記録しました。 火で森を焼き、大気汚染が問題になっていた地域にとっては歓迎すべきニュースです。

森林の減少。気候変動。そして、土地の酷使は地球の大地に大きな問題を引き起こす原因になります。
それは砂漠化です

国連は、砂漠化が地球規模の環境危機を生む可能性があると警告しました。

すでに、中央アジアとアフリカでは数百万人が移住を余儀なくされています。 国連の調査によれば、その数は今後12年間で6000万人まで増える可能性があります。 民族紛争が続くスーダンでは、砂漠の難民キャンプで暮らす人が増え続けた結果、 水資源が大量に消費され、土地が農地化されて酷使されています。 草が減り、表土が風に吹き流された結果、一帯はサハラ砂漠の一部と化しているのです。 中国の北部では、ゴビ砂漠の砂が一年間に2400平方キロメートルのペースで砂漠の周辺の土地に進出しています。 多くの街が砂に呑み込まれました。砂は北京にも頻繁に飛来します。 時には、太平洋を越えてアメリカにまで届くこともあります。 この問題を重く見た中国政府は、現在80億ドルを投じて世界最大規模の森林再生プロジェクトを進めています。 内モンゴルから北京までのおよそ2500キロメートルにポプラの木を植えて砂漠の砂の進出を食い止めるグリーン・ウォール・オブ・チャイナというプロジェクトです。 巨額を投じることに批判的な声もありますが、 中国政府は既におよそ8000平方キロメートルの土地が砂漠化を免れており今後も十分な効果が見込めると確信しいます。 環境指標では、砂漠化も含めた様々な土地の問題にも視点を当てています。




生態系の保護


陸上の生態系保護の項目では、ルクセンブルググリーンランドベリーズなどが上位にランクされています。 一方で、北朝鮮トルコハイチなどはランキングの下位です。

私たち人間が地球で生きていられるのは、地球の豊かな自然がきれいな水や空気をつくりだしてくれているからですが、 それは、人間以外の生き物にとっても同じことです。

地球にはおよそ200万種の生き物がいますが、それは現在わかっている数にすぎません。 まだ全体の90パーセントは発見されていないと考える学者もおり、 実際に去年(2007年)だけで800種以上の新種が発見されています。 スリナムコロンビアの熱帯雨林では、 生物学者が20種類以上の新種を発見しました。 その中には、輝く色のカエルや数種類のコガネムシやアリなどがいます。 ベトナムでは1種類のヘビと2種類の蝶、5種類の蘭がみつかり、 コンゴではコウモリ、ネズミ、カエルの新種がみつかりました。 ブラジルでは過去に消えたと思われていた人間の部族もみつかっています。

去年(2007年)は、野生動物保護が成果をあげている実例もみることができました。 アメリカの絶滅危惧種の象徴であるハクトウワシは、35年間でその数を回復し絶滅危惧種のリストから外されました。 現在は数1000羽にもおよぶハクトウワシが、カリフォルニアの北部からカナダとアラスカまでの広い範囲に生息しており、 今後も彼等の生息地が保護されている限りは絶滅の危機にさらされる恐れはありません。

さらに去年は、地球でもっとも大きな動物であるシロナガスクジラに関しても、うれしい報告をきくことができました。 南半球のシロナガスクジラは、わずか数100頭にまで減っていましたが、 その数が2000頭以上に回復したことが確認されたのです。 しかし、全世界のシロナガスクジラを4500頭しかおらず、今も絶滅の危機にあることには変わりありません。

そして残念なことに、その数が急速に減り続けている動物たちもいます。 ガンジスワニニシローランドゴリラヨウスコウカワイルカは、 絶滅の危機に瀕しており、そのなかでもヨウスコウカワイルカは既に絶滅してしまった可能性もあります。

中央アフリカのコンゴにあるミルンガ国立公園です。 この緑豊かな山に暮らしているマウンテンゴリラも絶滅の危機に瀕しています。 穏やかな性格のマウンテンゴリラは、自然破壊や密漁のせいでおよそ700頭にまで減っています。 去年、4頭のマウンテンゴリラが無残に殺される事件がありました。 それは保護区の木を伐採して金儲けをしている人間たちによる警告だと考えられています。 このような大自然の中で残酷な行為があったのは信じがたいことです。 彼等はマウンテンゴリラを見せしめにして、「俺たちの邪魔をする者は皆殺しにする」というメッセージを残したのです。 銃で殺されたのは、出産を間じかに控えたメスと群れのボスである大きなオス、そして生まれて間もない子どもとその母親でした。 一度に4頭が殺されたのは、過去25年間で初めてのことでした。 野生動物保護協会は、はやくマウンテンゴリラの安全を確保しなければ絶滅の恐れがあると指摘しています。

環境指標をみるといくつかの国は野生動物と自然保護の項目で高い評価を与えられていることがわかります。 スリランカポルトガルケニアは、 さまざまな野生動物の保護とその生息地を守ることに積極的に取り組んで大きな成果を上げています。 その一方で、イタリア、パキスタン、グァテマラは、 自国の野生動物の保護にあまり積極的ではなくリストの下位にランクされました。

さまざまな野生動物に起きた問題の中には、人間の活動と簡単には結びつけられないものもあります。 去年(2007年)、アメリカ全土とカナダ、南アメリカ、ヨーロッパ、そしてアジアの農場で原因が分からない不可解な現象がみられました。

数10億匹のミツバチが、女王蜂や幼虫や食料を巣に残したまま何処かへ姿を消してしまったのです。 リンゴやブロッコリー、アーモンドに至るまで、アメリカの農作物の三分の一はミツバチによって受粉されます。 ミツバチが居なくなれば多くの農作物が実を付けられず、年間で数10億ドルの被害がでることになります。 ミツバチの消失は、全ての農業関係者をパニックに陥れました。 そして、全米各地で原因の調査が始まります。 原因がまったくわからないため、アサマビンラディンからハルマゲドンまで、あらいる可能性に目を向けられました。

おそらく姿を消したミツバチは、自分たちが病気になったと知って、 仲間のミツバチが同じ病気に感染するのを防ぐために離れていったのだと思います。 当初は、ダニや昔から存在しているのと同じ原因で病気になったのだろうと思いました。 ミツバチに大変なことが起きていることは間違いありませんでした。 まるで腐っているかのように組織が黒くなっていたのです。しかし原因はわかりませんでした。

ペンジルバニア州立大学でその答えになりそうな発見がありました。 大学の研究所では、ミツバチのからだからRNAを採取して体内のあらいる病原体を特定することができます。 そして、数ヶ月におよぶ調査の結果、イスラエル急性麻痺ウィルスの名前が浮かび上がったのです。

2004年にイスラエルで発見されたこのウィルスは、コロニーを正常に維持している他の国のミツバチの体内からもみつかります。 しかし、研究者は他の病原体や農薬、そしてアメリカの栄養環境などの影響でこのウィルスを持つミツバチのからだに異変がおきたのだと考えています。 しかし、不安は残ったままです。




代替エネルギー


去年(2007年)、私たちが学んだことがあるとしたら、 それは地球のあらいる環境においてさまざまな変化が起きているということです。 その結果、世界中の政府や市民がこの問題を真剣に受け止めて地球の環境に対する向き合い方を変え始めています。

バチカン市国は9月に世界で始めてのカーボンニュートラルな国になりました。 それは、或る環境再生企業がハンガリー中央部の15ヘクタールの区画に植林し、 かつてそこにあった森を蘇らせて、バチカン市国で一年間に車や暖房などによって排出される二酸化炭素を吸収させるというものです。 世界各国の政府も二酸化炭素排出量を抑えるために同じような取り組みをしており、 そこには、企業や有名人、政治家の思惑も絡みます。

代替エネルギーへの切り替えは、現在は世界的な流れになっています。

ニューヨークでは2012年までにすべてのタクシーがハイブリッド車になり、それによって大気中に排出される二酸化炭素が年間でおよそ20万トン減ると見込まれています。

中国は、化石燃料に代わるエネルギーの普及に2650億ドルを投じることを表明しました。 その目標は、2005年に7.5パーセントだった代替エネルギーの使用割合を、2020年までに15パーセントまで引き上げることです。

アメリカ政府はおよそ2億ドルの費用を投じ、炭素隔離と呼ばれるテクノロジーによって排出された二酸化炭素を地下深くに溜める試みに取り組んでいます。 この試みが成功すれば、エネルギー省は3兆トン以上の二酸化炭素を地下に溜めることが出来るといいます。 それは、アメリカの二酸化炭素排出量の1000年分以上です。

オーストラリアは、2010年までにすべての白熱灯を蛍光灯に切り替え、2012年までに二酸化炭素排出量を400万トン削減する予定です。 すべての国が後に続けば数1000万トンの削減が可能です。

エネルギー対策は世界的な重要問題であり、環境指標には国ごとのエネルギー対策を数値で評価したランキングもあります。 アイスランド、ノルウェイ、パラグアイは、エネルギーを効率的に使っています。 エネルギー対策に積極的な国は確かな成果を上げています。 デンマークは風力発電に力を入れて二酸化炭素の排出量を減らしていますし、ドイツでは他のどの国よりも国民の間にソーラーシステムが広く普及しています。

去年(2007年)は、地球の環境を改善しようとする動きがあらゆる分野で活発化した一年だったといえます。

7月には、地球温暖化の防止活動を促進するためのライブ・アース(LIVE EARTH)が開催されました。 このコンサートは世界中に放送され、130カ国で800万人もの人がみたとされています。 さらに、アカデミー賞とノーベル賞でも地球温暖化の問題に焦点があてられました。 アル・ゴアは、ドキュメンタリー映画「不都合な真実」でオスカーを受賞し、気候変動に関する政府間パネル(IPPC)は、ノーベル平和賞に輝いています。




エピローグ


温室効果ガスの排出量、魚の乱獲、森林伐採、生態系の保護などについて、各国の現状をみてきました。 その結果、最終ランキングでは、イラン、キューバ、トルコがランキングの下位を占め、最下位はオマーンです。 その反対に、パナマ、ケニア、アイスランドは環境に優しい国であり、栄えあるナンバーワンの座に輝いたのはナミビアでした。

その国がどの位置にランクされたとしても、これからの環境への貢献によってこのランキングを変えることはできます。

人間は地球の環境にとって最大の脅威ですが、これまでも考え方を変えて技術を利用することでよりよい環境を実現することもできるのす。

私たちは地球の現状に目を反らさずに正しい道を進まなければならないのです。

 

11th May 2008
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