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あの人からのメッセージ2007 気骨の人たち 城山三郎

 

2007年、日本人の戦後の生き方を問い続けた作家が亡くなりました。

城山三郎 [ しろやまさぶろう ] さん(享年79歳)
戦争が終わった時、私は17歳の少年兵でしたけれど、 何を感じたかというとですね、 空というものはそんなに高いものか、 ということをしみじみ感じたんです。
つまり軍隊にいると‥‥、上にはぐーっと階級社会ですから‥‥、 どんなことがあってもこういう青空の高さを‥‥、 まぁ、それだけが何百万という人が死んで私たちに贈って くれたものですから‥‥、 これだけはどうしても守らないかんと‥‥。



城山さんの作家としての原点。それは戦争です。


神奈川県茅ヶ崎市。
城山さんはここで、経済成長の中で生まれる日本社会の 歪みに焦点を当て、経済小説という新しい分野を開拓しました。 小説を通して人はどうすれば組織の中で個人とし生きられるのかを問いかけています。

代表作 『 真昼のワンマン・オフィス 』
サラリーマンは絶対に上の人に逆らわぬことだ。 わしは一度だけその禁に背いた。 どうしても自分の意見の方が会社のためになるように思えて。 専務にとっては一度反対したやつは百回反対したのと同じなんだ。

城山さんはよく男の美学。生き方の美学。美学ということを仰います。

城山
私が好きな考え方は、男の美学というのは、報われない、 報われることを求めないことだと思いますね。 無償の努力っていいますかね。小さなそろばんを弾かないで、 とにかくその中に入ってしまう。ということですね。 これをやったらこういうものがもらえるとか。 そういうこと考えないで、とにかく決めたことに没頭してしまう。
日本語でよく 『 泥を被る 』 っていうでしょ。 泥を被る人って、男の美学だと思いますね。 逆に 『 難問先送り 』 なんて言ってね、自分でやらないで 人にやらせるっていう人は、いちばん美学に欠ける人なんですね。 いろんな意味で泥を被るっていうことをやれば、大小問わずね、 そういう人は大変魅力的ですし、人が、長い目でみていくと付いて来ますしね。
僕は、泥を被る人かな被らない人かなということを 政界とか財界のリーダーなんか見ててね、非常にそれに興味があるんですけどね。

城山さんは、昭和2年、名古屋市で室内装飾を営む家に生まれました。 10歳の時に日中戦争が始まり、その後、軍人になることを夢みるようになります。
昭和20年、アメリカ軍の沖縄本島上陸。そして、B29の本土空襲。 日本の敗戦が迫っていました。この年の5月、17歳の城山さんは親の反対を押し切って海軍に入隊します。 その三ヵ月後終戦。戦争は、純朴な青年の心に深い傷を残しました。

城山
愛国で思いつめて軍隊に行けばいいと思って行ったわけですね。 実際に海軍に入ってみたら考えてたのと全く違って。 或る意味で、腐敗っていうか、おかしいっていいますか。
例えば、食べ物ひとつでも、私たちは食べるものはほとんど芋の葉っぱだけですよ。 ところが仕官食堂の横を通ると毎日のように「てんぷら」だ、「とんかつ」だ、 ってやってるわけですよね。 そういうめちゃくちゃな差別というか不平等がありますしね。
私なんか頭、私だけではありませんけど、棍棒で殴られ詰めで。大仏様の頭にいぼいぼがありますね。 あれと同じで。人間の頭にこんなにこぶができるのか、と思うぐらい何十というこぶを作って。
とにかく酷い社会だということだったです。
私は‥‥、 『 牛馬の如く 』 って、人間がこき使われる時に言いますけど、私なんか牛馬が羨ましかったですね。 牛馬は夜寝れますしね。こぶの出るほど殴りませんし。
体操の教師が、或る日、かっこのいい軍服をしょっちゅう着てくる教師でしたけど、 おまえたちの中で、婦人クラブとか婦人なんとかってありますね、婦人雑誌が、 そいういうものを読んだことのある者、手を上げろ、って言ったんですね。参考までに、って。 何人か手を上げたんですね。 するといきなり形相変えて、 「 立て 」 、って言って。 お前達は男じゃない、男に鍛え直すには軍隊に行くしかしょうがないから 今すぐここで志願しろ、て言うです。そういうペテンに懸けて。非常に激しい軍国主義教師だったです。
それが、私が復員して帰って来てから、数年経って、ふっとあれしたら文部省の役人になってるんです。 そしてある処で、少年たちを健やかに明るく育てるためには、って講演してるわけです。 え~っと思って。とにかく世渡りがうまいって言うか、便乗主義者っていいますか。
まぁそういう便乗主義者の大群、まぁ大群がどうか知りませんけど、 恐いな~、つまりこういう人たちを許しちゃいけないなぁ、 と思うし、結局自分で考えていくより生きる道はないんだなと思ったんです。

やっぱりこの世の中に 『 絶対 』 というものは無いんだと、 或いは 『 大儀 』 というものは無いんだということを。 戦争で皆そういうことを経験して来たんですけど、 これからの人たちも、やっぱり 『 絶対 』 というものは無いんだと、 みんな一人ひとりが自分で、手作りで、自分たちそれぞれの 生き甲斐といいますか、生き様といいますか、生き方をみつけていくと。
いろんな生き方があれば、そういう方へいっぺんに流れていかないでしょうから。

『 夏草の祈り 』 より
夏草の祈り。広島から三里の基地。夏草の茂みを分けて、激しい訓練が始まっていた。  「 きさまらは一人五銭だ。葉書一枚で代わりが来るんだ。きさまらの一人や二人、叩き殺したって 惜しむにあたらぬ 」 と、バッターがとび、たらたら血の汗を流しながら、 18歳の僕らは、地を這い石につまずきつ、切り込み戦術を繰り返していた。
いまこそ僕らは防がねばならない。母を泣かせ、老婆を狂わせ、 世界中を泣かせる恐ろしい悪夢を。二度と繰り返してはならないのだ。

命じられるままの社会に明日はあるのか。
城山さんは昭和20年の体験を忘れることはありませんでした。



城山三郎と個人情報保護法


2001年、個人情報保護法案が政府から提出されました。 城山さんは自由な表現や取材活動を制限するものだと、徹底して反対します。 戦前・戦後と同じ道を辿る事を危惧したのです。

城山
自由主義国家というのは、言論の自由あってこそバランスがとれて、 制約がきいて、政府の活動といいますか、全てが許されているわけですが。 その一番大事な言論の自由をまず真っ先に消してかかろうという今の内閣 の姿勢といいますか‥‥、いったい何考えてるんだろう。

個人の尊厳。
平和への願い。
純粋に、真っすぐに生きた一人です。

 

7th Jan. 2008
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