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地球温暖化 森林破壊を食い止めろ

 

国際社会に突きつけられた課題


地球に迫り来る温暖化の危機。その原因となる二酸化炭素を吸収しているのが、熱帯雨林です。しかし、いま、その豊かな森が地球上から急速に姿を消しています。

 

インドネシア専門家 「森を守らない限り地球温暖化が加速し続ける」

 

森林破壊に拍車をかけているのが、皮肉なことに温暖化防止の切り札とされるバイオ燃料。原料となるアブラヤシを栽培するため途上国では次々と熱帯雨林が切り開かれているのです。

 

インドネシア林業省次官 「環境も大事だが我々には開発が必要だ」

 

森林破壊をどう食い止めるか。国際社会に突きつけられた課題を検証します。

 

温暖化対策に逆行する事態


2000年から2005年の間に、日本の国土の面積に匹敵する森林が、この地球上から失われています。特に現象が激しいのが、インドネシアやブラジルなどの熱帯雨林です。森林破壊によってもたされる二酸化炭素の排出。その量は、排出量全体の20%にものぼっています。

森林破壊を食い止めることが重要であることは長い間認識されてきましたけれども、有効な手立てが打たれないなかで、いままた新たに、森林破壊を加速させる事態が生まれているのです。

温暖化対策の切り札とされているバイオ燃料。その原材料であるアブラヤシを生産するために、途上国では森林が次々と切り倒されています。

失われた森林の回復を目指そうと、京都議定書では、先進国が資金を出して途上国に植林を促すしくみもつくられていますが、それが十分には機能していませんし、また、途上国からみて、いまある森林を守ることが得だと考えられるしくみも、いまのところありません。

こうした中で、現在、インドネシアで開かれている温暖化対策を話し合う国連の会議、COP13では、はじめて、いまある森をどうすれば守ることができるかが重要なテーマと位置づけられました。

熱帯雨林を次々と破壊し、そしてバイオ燃料の生産量の拡大がいかに本来の目的である温暖化対策に逆行する事態を招いているのか、インドネシアでご覧いただきましょう。

 

バイオ燃料が森林を破壊


インドネシアで森林破壊が最も進んでいるスマトラ島中部のリアウ州に向かいました。私たちが目にしたのは、広大な熱帯雨林が切り開かれた光景です。二酸化炭素を吸収するはずの森林が、荒れ果てた大地に姿を変えていました。

 

村長 「ここでは二年前から伐採が始まりました。今では、1万ヘクタールもの森林が失われたのです。想像できますか?」

 

スマトラ島では、1960年から2000年の40年間で森林も面積が半減しました。このままのペースで森林破壊が進めば、2010年にはほとんど消滅してしまうと予測されています。 森林を伐採した跡地に植えるため、次々と運ばれている植物がありました。アブラヤシの苗木です。インドネシアではいま、金のなる木として盛んに栽培されています。

先進国では地球温暖化対策の切り札としてバイオディーゼルの需要が急速に拡大しています。その原料となるのが、アブラヤシからつくられるパーム油なのです。

パーム油の生産量世界一位のインドネシアでは、生産拡大のためこの10年で九州より広い面積の森林が失われました。先進国の温暖化対策が、途上国の森林破壊を加速させる皮肉な結果を招いています。

 

パーム油生産組合長 「バイオディーゼルなどの需要が高まっているなかで、パーム油の値段が上がり、収益が上がっています。世界の需要に応えるため、生産を拡大していく必要があります。

 

温暖化を加速する森林破壊


森林が伐採されると二酸化炭素の吸収源が失われるだけではありません。破壊された後の森林は、温室効果ガスを大量に生み出す排出源に変わることが、最近の研究で判ってきたのです。

森林破壊と温暖化との関係を研究している、パランカラヤ大学 アスウィン博士です。

アスウィンさんがとりわけ注目しているのは、泥炭と呼ばれる特殊な土壌です。枯葉や枯れ枝が何千年もの間湿った状態で完全には分解されない状態で蓄積したものです。

 

アスウィン 「この泥炭が乾燥すると二酸化炭素を大気中に排出するのです。」

 

泥炭には森の木が吸収した炭素が大量に閉じ込められています。森の木が切られると、直射日光が当たるようになり、泥炭の乾燥が進みます。 すると蓄積されていた枯葉や枯れ枝の分解が加速します。閉じ込められていた炭素が、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスとなって大量に排出されてしまうのです。 しかも泥炭は、乾燥すると炭のように燃えやすくなる性質をもっています。一旦燃え始めると大規模な森林火災に繋がりやすく、二酸化炭素の排出量がさらに増えてしまうのです。

 

アスウィン 「問題は人間が泥炭の森に手を加えることです。泥炭の森が破壊されると取り返しのつかないことになるのです。」

 

アブラヤシを栽培するために森林を伐採した結果、泥炭から排出する大量の温室効果ガス。その量は、先進国がバイオディーゼルを使うことで削減できる二酸化炭素の5倍から10倍にのぼるという試算もあります。 それでも、インドネシア政府は需要の拡大が見込めるパーム油の生産を10年で倍増させる計画を進めています。

 

インドネシア林業省次官 「我々にも開発が必要です。環境も大切ですが経済も大切なのです。」

 

森林再生 機能しない枠組み


ジャワ島中部で日本の林業会社が植林事業を始めようとしています。8万本の木を植え二酸化炭素を吸収させる計画です。 京都議定書で定められたCDM ( クリーン開発メカニズム )に沿って行われる植林で、インドネシアでは初めてとなります。

CDMの仕組みです。先進国の企業が資金などを提供して途上国で植林を行います。植えられた木が吸収する分の二酸化炭素を企業が減らしたとみなされるのです。 削減した分を国や他の企業に売ることもできます。企業などが経済的な利益を求めて積極的に植林を進めるよう促すのがねらいです。 ところが、この林業会社が植林事業の試算を行ったところ、メリットがほとんど得られないことがわかりました。植林事業には最初の5年間で人件費など5400万円の経費がかかります。 その間、植えた木が吸収する二酸化炭素の量はおよそ250トン。現在、国際市場では1トン当たり400円程度しか評価されず、これを売って得られる収入は11万円です。 20年間続けた場合は、1億円の費用に対し、収入は1000万円。続ければ続けるほど赤字が膨らむのです。

CDMによる植林の取り組みはこれまで世界でわずか11件。この会社では事業性は極めて低いとして、今回の植林を社会貢献事業と位置づけています。

環境ビジネスが専門の日本大学の小林紀之教授です。CDMによる植林は、市場メカニズムだけに頼っていては十分に機能しない、と指摘しています。

 

小林紀之教授 「植林CDMの地域に対する貢献、環境面を評価できる方法があればいいと思っている。これを入れていくと、企業が植林CDMを推進するインセンティブになるとは思います。」

 

森林保護 新たな取り組み


先進国の側に任せるだけでなく、途上国の住民に自らが森を守るよう促す取り組みが、国際NGOの手によって始められています。

インドネシア中部の人口2000人の村です。人々はこれまで森で、ゴムや蚊取り線香の材料となる木の皮を取って生計をたててきました。しかし森林破壊で生活の糧を失いつつあります。 生活苦から違法な伐採に手を染める人があとを絶ちません。伐採が禁止されている地区に入って木を切り出し、それを売って生活するという悪循環に陥っています。 森林の保護に取り組んでいる NGO ウェットランド・インターナショナルは、この悪循環を断ち切ららなければならない、と考えました。 地元の人たちに経済的なメリットを与えることで、彼ら自身の手で植林をしてもらう取り組みです。活動資金は先進国からの援助でまかなっています。 植えているのは、もともと泥炭地に自生していたゴムの木の一種です。木が成長した時に住民たちがゴムを採って売ることができるようにするためです。

NGO は植林に参加する人に資金を融資します。木を切らなくても生活していけるよう新たな事業を始めてもらうのがねらいです。決められた本数の木を植えると、利子の返済は免除されます。 さらに3年間、森の手入れを続け、植えた木のうち70%が枯れずに残れば、元金も返済不要になります。住民に森を守る動機を与えることで、これ以上の森林伐採を食い止めようというねらいです。

この植林プロジェクトに参加している、ノルディンさんです。2000本の木を植える見返りに、NGOから借りた資金はおよそ2万円。これを元手にノルディンさんは、魚の養殖を始めました。 融資を受ける前はやむなく木を切っていた、というノルディンさん。養殖を始めたことで、一定の収入が得られるようになり、生活が安定した、と言います。

NGOからの融資受けて新たに店を開いた人もいます。主婦のグループが始めた農薬や肥料を売る店です。プロジェクトにはこれまで150人あまりが参加し、収入は平均で20%増えたということです。

森を守れば経済的なメリットが得られるようになったことで違法な伐採が減ったのに加え、これまでに110ヘクタールが地元の人たちの手で植林されました。

 

NGO地元代表 「まずは地元に人たちの生活を守らなければなりません。そうしなければ、森を守って地球温暖化を防ぐことなどできないのです。」

 

どう止める森林破壊


Q 「いまのCDMの課題は何ですか」

A 「CDMの最大の問題は炭素価格が安すぎるということが上げられる。いまのところ排出量取引制度、 あるいは炭素に値段を付けていく制度というものは、2012年までは続くと決まっているのですが、 その後どうなるかというのが全然わからない。そのような不確実性があるなかでは、企業はなかなか投資ができない、 ということでなかなか価格が上がらない、という事が問題になっています。」

 

Q 「森林を破壊することによって生み出される温暖化への悪影響が非常に大きい。森林をそもそも切らない、そのまま残すことの方が有用性が高いわけですよね」

A 「CDMのもう一つの問題点といえるかもしれませんが、目に見えるものにしかお金を上げられない。つまり何か活動することにしかCDMとして承認されないわけです。 一旦切られた森というのは、その土壌からもどんどん炭素が出ていってしまうわけですから、切って植林するというよりは、最初から切らないということの方が望ましいわけです。」

 

Q 「森林そのものの価値の高さというのは見直されてますか?」

A 「そうですね。炭素の保全機能だけではなくて、森林には生物多様性といった機能、あるいは土壌の保水機能を保つといった さまざまな機能があるわけですから、そのような観点からも木を切らずにそのまま残しておく、何もしないでおくことの活動に何らかの価値を生み出していく ということが、今後必用になっていくということをようやく皆が認識してきた、ということです。」

 

Q 「途上国の人々にとって、残すということが得になるシステムをこれからつくっていかなけれないけないわけですけれど、どのようにしてつくっていけるとお考えですか」

A 「うまく先進国にある投資のお金を途上国に流していく、というようなシステムが必要になってきます。例として、世界銀行はそのようなプロジェクトを始めていまして、 先進国から途上国にお金を出して、その森林を守るということ、つまり何もしないということによって、どれぐらいの排出削減が実現できるのかということを 検証していこう、そのような取り組みが始まっています。」

 

インドネシアでの会議のムードの変化、これががひとつの希望かもしれません。

 

10th Dec. 2007
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